母への誕生日プレゼントを買いに行った百貨店で、客として来ていたヒロインに出会う。ヒロインは困っていた真守に話しかけ、プレゼント選びを手伝ってくれた。

お礼がしたいと言って真守がヒロインを食事に誘い、その後何度かデートを重ねたふたりだったが、真守はその関係に満足していた。彼女は自分にはもったいない。たまに笑顔を見られるだけで幸せ。

ところが真守の姉たちがヒロインのことを聞きつけ、お試しでの同居を提案する。彼女を逃したら一生結婚できない、と真守を脅す姉たち。もともと惹かれ合っていたふたりは戸惑いながらもその提案を受け入れ、新婚ごっこのような同棲生活が始まった。

「こういう機会ですから、改めて自己紹介をしますね。私は藤ヶ谷真守（ふじがや　まもる）。仕事は将棋のプロ棋士をしています。そろそろ引退も考えるような年ですが……」

「貴女は私と比べてまだ若いですし、結婚をあせることもないでしょうに。いくらなんでも、こんなおじさんとお試し同居だなんて……」

「明日はきっといい日です。なぜって……うーん……。貴女はいつも頑張っているじゃないですか。だからその分、きっといいことがあると思います」

弦二の経営するホテルのロビーで、マルチ商法の勧誘が行われていた。そのカモにされていたのがヒロイン。

人のいいヒロインは断ることができず、見かねた弦二が助ける。弦二は純粋な善意で助けたわけでなく、自分のホテルで詐欺師に好き勝手されたくなかったのだが。

ともかく人のいいヒロインは、彼にお礼をしなければと考える。「私にできることは？」というヒロインに、弦二は「ハウスキーパーが決まるまで、出ていった妻の代わりに家の管理をしてほしい」と話す。

はじめは退屈しのぎで家に住まわせたヒロインを、弦二はついつい甘やかす。そして彼女に癒やされている自分に気づくのだった。

「改めて自己紹介な。俺は室生弦二（むろう　げんじ）。会社をいくつか経営している。この前会った赤坂のホテルの他に、クラブやレストランを何軒か……二ヶ月前に三人目の妻が出ていって。離婚届が送られてきたから、それ出せば、俺もバツサンか～」

「きみ、意外としっかりしてるんだな。マルチ商法の勧誘に捕まってた時は、どんくさい女だなと思ったが……。いや、すまない。今のは忘れてくれ」

「おやすみのキス。ばーか。酔ってねえし、前の奥さんとも間違ってない。お前にしたくてしたんだよ。……で、お前からは？」